【あなたは傲慢?善良?それとも両方?】辻村深月さんの『傲慢と善良』を読んでみた。

アイキャッチ画像 女性の横顔 本の紹介
うさ井
うさ井

自分の人の善さには、うんざりしちゃうな。

ほん太
ほん太

うさ井さん、こんにちは。
あまりうんざりしていないっぽいせりふだね。

いったいどうしたの?

うさ井
うさ井

あぁ、ほん太くんか。こんにちは。
昨日の食事中、お腹いっぱいだった時に、余ったおかずを他の人にあげたんだよ。
最初は「ぼくもお腹いっぱいだから」と断られたけど、無言でにらみ続けたら、ちゃんと食べてくれたよ。

ほん太
ほん太

…傲慢さと善良さって、紙一重だよね。
小説『傲慢と善良』(辻村美月/著 朝日新聞出版 文庫版出版2022年)を読むと、きっと気づきがあると思うよ。


『傲慢と善良』一行紹介
婚約者の真実(まみ)が姿を消し、架(かける)は居場所を探すため、彼女が関わってきた人達に会う


『善良と傲慢』あらすじ

架と同居していた婚約者の真実が、突然姿を消した。
二人は二カ月前から、架の部屋に同居していた。そのきっかけは、留守中の真実の部屋にストーカーが入ってきていたから。

警察に相談するも、事件性がないと判断されてしまう。
そのため、架が自分で真実の居場所とストーカーの正体を探ることを決める。

架は手がかりをつかむため、真実の家族や、過去の見合いを取り持った結婚相談所、当時の見合い相手、元同僚らに会い、話を聞く。
その結果たどり着いた答えが、「ストーカーは―――」

“傲慢”

タイトルにもなっている“傲慢”は、架(かける)が自身を振り返るときに出てくる言葉です。

婚活で出会った真実と二年間交際しているが、結婚に向けて具体的に動かなかった架。
元カノが結婚を希望していた時にも、相手から結婚を迫られながらずるずると先延ばしにし、破局した過去があります。

自分が結婚したくなるまで、待っていてくれるものだと思っていた」という“傲慢”。
そんな傲慢の結果、元カノは去り、真実はストーカーの問題に直面するのです。

うさ井
うさ井

相手を待たせるのは失礼だよ。
だから、目の前に出された食べものは、誰のものであれ爆速で食べるようにしているよ。

ほん太
ほん太

…「自分のもの以外も食べて構わない」と思うのも、傲慢だと思うな。

“善良”

“傲慢”に対して“善良”は、真実(まみ)をあらわす言葉として出てきます。
最初は言葉通りの意味として「真面目で優しい」。
一般的には、善良なのはいいことです。

しかし、架が真実を探す中で会った結婚相談所の小野里夫人が、こんなことを言います。

「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけれど、一人ひとりが自分の価値観に重きを置きすぎていて、皆さん傲慢です。その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、“自分がない”ということになってしまう。傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います」

『傲慢と善良(文庫版)』(辻村深月/著 朝日新聞出版 文庫版発行2022年) ※太字はほん太による

善良であることは、“自分がない”という恐れがある。
つまり、善良であることが、必ずしも美徳だとは限らないのです。

特に作中でよく取り上げられる婚活では、美徳である善良さが障害になることが書かれています。
たとえば真実の姉は、「真面目ないい子が何の恋愛経験もないのに、いきなり自分で結婚相手を見つけるのは無理」と言います。
架自身も、「真面目な人間がなかなか打算的になれない」ことをデメリットとして認識します。

そんな善良な人が自分で相手を決められず、「ピンと来ないから」と見合いを断るのは、“傲慢”だととられがち。
なんともやるせないですね。

うさ井
うさ井

そうか。善良でいることも、捉え方によっては、よくない面があるんだね。
自分を目いっぱい出していかなきゃ。

ほん太
ほん太

…ほかの人の食べものまで手を付けようとする人は、十分に自分が出ていると思うよ。

逆に、傲慢が善良と解釈できるパターンも作中に出てくるのですが…それはこの作品で一番いいところ(個人の感想)なので、ネタバレはやめておきます。

読んだ後の、ほん太のきもち

今回は辻村深月さんの小説『傲慢と善良』を紹介しました。
読んだ後のほん太の気持ちをまとめます。

ほん太
ほん太

自分は善良側だと思っていたけれど、それが決して自信の持てることではないと感じたよ。
あと、他の人を許し、受け入れる。それもなるべく早く

「相手が、明日も待ってでけると思うのは、図々しいっちゃ。急にそれができなぐなった人だぢ、わたしもうんと、見できたがら」

『傲慢と善良(文庫版)』(辻村深月/著 朝日新聞出版 文庫版発行2022年)
うさ井
うさ井

なんだか、なまっているけど。
ほん太くん、いくら東北に愛着があるとはいえ、改変は良くないよ。引用文は、原文と一致していないといけないんだよ。
逮捕されて、不衛生な犬小屋みたいなところにぶち込まれるよ。

ほん太
ほん太

うさ井さん、意外と著作権に詳しいね。
でも、この文は原文と一致しているよ。物語は、途中から舞台が東北に変わるんだよ。
あと、“不衛生な犬小屋”は聞き捨てならないよ。

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