インコ林くん、「都市伝説の出どころは、きみの心の中だよ」と言ったら信じる?
(…やべぇ団体の勧誘?まじ怖ぇ。)
あ、すみませーんッス。ちょっと急いでるので、失礼しまーッス。
何か勘違いされている…?
📖『現代民俗学入門』(島村恭則/編 創元社 2024年)によると、どうやらそういう見方ができるらしいよ。
📖『現代民俗学入門』(島村恭則/編 創元社 2024年)一行紹介:
伝統的な風習からネットミームまで、身近な文化を民俗学で理解する一冊。
【本の目次紹介】
・1章 日常のなぜ
・2章 四季のなぜ
・3章 人生のなぜ
・4章 都市伝説のなぜ
都市伝説とは
都市伝説と言えば、
・口裂け女
・学校の花子さん
・テケテケ
みたいな、現代版の怪談みたいなやつッスよね。
この本の中で都市伝説の定義は、
「現代の都市的な状況の中で生まれ、うわさとして伝えられる物語」のことだとしているよ。
「都市伝説」という言葉は、もともと民俗学の専門用語だったそうです。
民俗学者たちは研究の結果、都市伝説が生まれる理由を、このように考えました。
都市という複雑でよくわからないシステムに対する人々の不安や恐怖心が都市伝説として表現されている
『現代民俗学入門』(島村恭則/編 創元社 2024年) ※太赤字、下線はほん太による
そして伝説へ… 不安から育つ都市伝説
ミミズ肉
ずいぶん前に、「ある飲食チェーン店では、ミミズの肉が使われている」というのを聞いたことがあるッス!
それ事実無根のことだから、信じないでね。
そのウワサも、「人々の不安や恐怖心」から発生していると考えられるね。
チェーン店は、とても大きなシステムのもとで運営されています。
なので、客として行ったくらいでは、自身の目ですべての安心を確かめることはできません。
「なんでこんなに安く早く料理が出てくるの?」等の疑問が不安に育ち、事実無根の都市伝説となったのでしょう。
口裂け女
口裂け女って、「わたし、キレイ?」のやつッスよね?
口裂け女は、夕暮れ時に現れる髪の長い女です。
マスクをした状態で「わたし、キレイ?」と聞いてきます。
「きれい」と答えると、「これでも?」といってマスクを外します。
するとその口は耳まで裂けていて…。
逃げてもとことん追いかけてきて、ナイフで口を裂かれるそうだよ。
怖っ。
口裂け女の話が出回ったのが、1978年から。
「三人姉妹の末っ子」とか「ポマードが苦手」など、いろいろなうわさが付け加えられて行きました。
そのうわさの中でほぼ一貫していたのが、口が裂けた理由。
「整形手術の失敗」だとするものです。
1978年は、美容整形外科が正式な医療として国会で認知された年でもあります。
魅力的な医療技術ですが、手術の失敗という恐ろしい結果も想像してしまいます。
医療の技術進化に対する不安が、口裂け女を生み出したのかもしれません。
拡散する伝説 「実話」風アレンジ
他の都市伝説も、不安を感じる場所が舞台ッスね。暗い路地とか、廃校舎のトイレとか。
でもどうして、都市伝説は日本全国に広まったんスかね?
それは、実話風に伝わっていることがポイントだよ。
人間はなぜか、創作よりも実話と称した話の方に興味を惹かれるようです。
例えば口裂け女の話が、「すっげぇ怖い夢見たんだけどさぁ」という出だしだったら、どうでしょう?
話者には失礼ですが、「なんだよお前の夢かよ」と、興味を失いませんか?
それよりも「実は昨日の夜に〇丁目の道路で口裂け女に会って…」とか「友だちの〇〇が口裂け女に会ったらしい」という実話テイストのほうが、聞きたくなりますよね。
そういえば怪談の超怖いやつって、誰かが体験したように話してるッスね。
実は、人間は会話の中で相手の話の種類を無意識に判断し、早々に聞く態度を決めているそうです。
その点、実話っぽい話は興味を引き立て、じっくり聞いてもらえるということです。
じっくり聞いてもらえれば、広まりやすくなりますよね。
ネットでよく見る「外国人が『日本サイコー!』ってなる話」も、実話風で広まっているよね。
さいごに
都市伝説の出どころについて、📖『現代民俗学入門』から紹介しました。
ポイントは、
・都市伝説は、よくわからないシステムへの不安や恐怖から生まれる
・実話風に語られることで、興味を持たれ拡散される
ことでした。
そう考えると確かに、都市伝説は「心の中」から生まれるのかもしれないッスね。不安や怖さから。
怖さを楽しむくらいならいいッスけど、ミミズ肉の話みたいに、誰かに迷惑かけそうなのはだめッスね。
うん、そうだね。
「わからない人だから、悪口広めて排除する」はダメだね。
『他者といる技法』のときも触れたけど、「理解できないままでも、一緒にいられる方法を考える」ことが大事だよね。